2005年01月 アーカイブ
謹賀新年
明けましておめでとうございます。
皆さん、年末・年始はどのように過ごされましたか?
私はというと、毎年そうなのですが、とくに新年になるからといって特別なことはなく普通に過ごしました。
本当は、箱根の別荘(といっても私のではございませんよ。友達のです。)でゆっくり温泉につかろうとも思ったのですが、なんと大晦日に雪が積もりましたね。
当然、箱根は東京と比べものにならないくらい積もっているわけで、スタッドレスタイヤでないと危険なわけで、それで家のお風呂に温泉のもとを入れて独り暗~く過ごしたわけで・・・。(←「北の国から」風で)
何はともあれ、私は新年を迎えるにあたっていつも冷めていて、数字が変わる程度にしか考えていないのです(笑)。
なぜかというと、「今年は・・・」といったように1年ごとに何かをしようと決めるのではなく、3年、5年、10年先を考えて毎日毎日大事に生きていますので、新年を迎えようと私にとっては月が変わっただけなのです。
といったわけで、箕山クリニックは日々成長しておりますので、どうぞ本年もよろしくお願いいたします。
第4回スポーツ外傷講義:肉離れ
*筋肉の構造*
筋肉の最小構造は、顕微鏡レベルでしか見えない「筋原線維」という線維であり、これらが集合した一つの線維を「筋線維」と呼びます。
筋線維はさらに集合して束を形成し、「筋線維束」となります。
そして、この筋線維束が多数集まりあって一つの「筋肉」となるのです。
これら筋線維束同士は、それぞれ膜で覆われており、その「筋膜」でお互いがくっついています。皆さんがお肉を食べるときに膜のようなスジが出てくると思いますが、それがこの筋線維束同士をつなげている筋膜です。
さて、こういった構造をしている筋肉の端はどのようになっているかというと、筋肉というお肉自体はなくなり、筋膜だらけの集まりとなり最終的に「腱」というスジに変わります。ここでいうスジは、先ほど申したお肉の中のスジと違って、牛スジ煮込のスジになります。
この腱が、関節を越えて骨にくっついているため、筋肉が収縮すると骨をひっぱり関節が動くのです。
*肉離れとは*
陸上競技やサッカー、テニスなどの競技をされていると、肉離れを経験された方はおられると思います。肉離れが発生しやすい部位は、フトモモ裏の筋肉である「ハムストリング」やふくらはぎの筋肉である「腓腹筋」ですが、肉離れを経験したことがある方もない方も肉離れがどういう状態なのかはっきりとご存じないのではないでしょうか。
筋肉のどの部位で損傷が起きているか、前述の筋肉の構造での言語を使って説明すると、肉離れとは「筋腱移行部付近」(筋肉が端で腱に変わるとこと)での「筋線維束間の組織の損傷」ということになります。おそらく筋肉の線維が切れると思われていた方が大半だと思います。学術的な細かなことを申し上げると、線維の損傷もあり必ずしも間違いではないのですが、基本的には線維が切れた状態ではなく線維束間の膜の損傷と考えてください。
この筋腱膜の損傷で出血し、腫れて痛むのです。
*どういった動きで発生するのか*
具体的なスポーツでの動作を挙げると、「踏ん張る動作」や「切り替えしの動作」の瞬間に発生します。つまり、前述で筋肉の収縮によって関節が曲がると申しましたが、関節を曲げるという筋肉の収縮時ではなく、関節が伸ばされ過ぎるのを抑えストップさせるといったように筋肉が引き伸ばされながらも収縮している際に、肉離れは発生します。このような筋肉の動きを我々は「遠心性収縮」と呼びます。この際は、筋肉が普通に収縮(求心性収縮)するときよりも大きなパワーが発生します。例えば、10kgのダンベルを持ち上げれることができるとします。それ以上の重さを肘を曲げて持ち上げることはできなくても、始めから15kgのダンベルを肘を曲げた状態で持たせてもらい、15kgを支えながらゆっくり肘を伸ばしていくことは出来るのです。このような遠心性収縮は、スポーツ中の動作で言うと、踏ん張りや切り替えしなどの動作で起きているのです。ですから、短距離でハムストリングに肉離れが発生する際は、走行中の脚を挙げた際ではなく脚をついた瞬間なのです。
*肉離れ時の所見は*
必ず、「押して痛い(圧痛)部位」があります。
その筋肉を「ストレッチすると痛み」が誘発されます。
また、その筋肉を収縮させるように「抵抗を加えると痛み」が誘発されます。
*現場での処置は*
急性外傷の基本である「①安静(Rest)」「②冷却(Icing)」「③圧迫(Compression)」「④挙上(Elevation)」を行います。
「受傷日、翌日は入浴で温めることは禁止」です。温めることにより出血がひどくなり、筋内圧が高くなってしまうコンパートメント症候群ということを起こしてしまう恐れがあります。
*治療方針*
肉離れと聞くと大した事無いと思い、きちんとしたリハビリや復帰プログラムを行わずに練習やプレーを続け困ってしまうのが、同部位に硬いシコリを残し長期間にわたりツッパリ感が取れないどころか、動いた後は必ず痛みが出たり、繰り返し同じ部位に肉離れが起きてしまうことです。これを我々は「線維性瘢痕」、「拘縮」といいます。
これを防ぐためには、初期にはしっかりアイシングを行い、その後超音波などにより組織修復を促しつつ、硬い組織となってしまわぬようにストレッチングを行っていきます。
急性期を過ぎた時点では、積極的に温熱を加えさらにストレッチングを行い、平行して復帰への筋力強化を行っていきます。
*復帰時期の目安*
上記のように、肉離れといっても簡単に復帰できるわけではなく、再発を防いだり後遺症に悩まされたりしないようにしっかりと完治させるには、軽症でも実は「3~4週」、重症例では「6週以上」ということもあります。それは、損傷で出血した部位において2週ぐらいまでは出血がじわじわと少量ながらも続いていたりし、その後やっと血のかたまり(血腫)の吸収が起きるからなのです。
選手の皆さん、たかが肉離れとなめずに、受傷後はきちんとしたリハビリを行い、再発防止に努めるようにしてください。
イギリス留学
毎年冬になると、イギリスの嫌ぁ~な天候を思い出す。イギリスはこの時期もっと寒くて風が強く、この時期だけに限らないが毎日のように雨が降っている。旅行でイギリスに行かれたことがある方は、イギリスのいい印象しかないだろうが、実際に生活してみるといいことばかりではない。きっと海外で生活をされたことがある方の多くが思うことだろうが、日本ほど生活のしやすいところはない。
ところで、皆さんは医学の留学と言えばアメリカといったような印象が強く、何故イギリスだったのだろうとお思いでしょう。大抵の方から「イギリスは、スポーツ医学が進んでいるのですか?」と聞かれますが、特にそういうわけではありません。では、何故イギリスだったのか。
イギリスでは、卒後教育といって医師として働き出してからもきちんと教育を受けていかなければならないシステムがあり、この卒後教育を修学しMaster(マスター)の称号を取らなければ、医師としてのポジションが上がらないようになっています。イギリスの医師は、このMasterを取得するために1年間ほど完全に仕事を離れ、教育を受けなければならないほどしっかりしたシステムなのです。例えば、一人前の整形外科医になるためには、まず外科医の卒後教育コースにおいて手術の基本的なことを修学しなければならず、その後始めてメスを握ることができるといったように一歩一歩ステップを踏んでいかなければならないのです。日本では、その医師の努力次第では研修医のころからどんどん手術を行うことができるのとは大違いなのです。紙面上でしっかりとした教育を受けたが手術経験数の少ないイギリスの整形外科医と、手術経験は多く腕は達者だが頭が悪い日本の整形外科医、どちらがいいのかというと難しいですね。
話を戻して、私がなぜイギリスに留学したのかですが、このイギリスの卒後教育は外国人医師も参加できるうえ、なんと卒後教育のなかにスポーツ医学のコースがあったのです。そのスポーツ医学コースの教育内容は、私の考えるスポーツ医学に合致しており、スポーツ整形外科だけでなく生理学や栄養学、生活習慣病の運動療法などを含んだ総合学問でした。日本やアメリカにおいてはこれらを統括的に学べるシステムがなかったため、イギリスに渡り、1年間という短期間で集中的にこれらすべてを学んできたのです。
さて、「プロとは」のコラムで書いたように、ある結果を出すまでの過程というのが大事なのですが、私にも留学までの過程がありました。このイギリスの卒後教育、外国人医師も参加できるといっても当然英語能力がある程度の域に達していなければならず、IELTS注)において6.0以上でなければなりませんでした。そのため、その当時関東労災病院のスポーツ整形外科で働いていた私は、仕事が終わった後疲れきった体で毎日のように、神楽坂にあるBritish Councilというイギリス留学をサポートしてくれるところに英語勉強に通ったのです。大学生の頃からイギリス留学を考えており、その頃から英語の勉強は行ってきていたので、無事IELTS6.0をぎりぎりながらゲットでき、University of London Queen Mary and Westfield College(なんとも長いですが)の付属病院Royal London Hospitalが主催するスポーツ医学コースに入ることが出来たのでした。苦労して手に入れた留学の道、ヒースロー空港に降り立てば涙のひとつでもちょちょぎれるかと思いきや、何回か過去にも来たことのある空港、何にも感じなかったのが非常に悲しかった。
さて、肝心の教育内容は実際どうであったのか。年間プログラムがきちんと定まっておらず、何となく行き当たりばったりの教育プログラムのような感じはしたが、スポーツ医学をスポーツ外傷のことのみならず、生理学なども含めて総合的に学べ、現在役に立っているのは確かである。「日本の医療制度VS欧米の医療制度」で述べたように、日本とイギリスの診療の違いも見ることができ、非常にいい経験が出来たと思う。
イギリス留学は、本当に私にとって多大なことを与えてくれたものであった。それはプラスなことだけでなくマイナスなことも与えられたが、マイナスであったことも非常にいい経験であり、ある意味ポジティブにとらえることができる。具体的なマイナスを語りたくはないが、専門分野において競争し合うとき、人種差別は必ずあるのだと身をもって感じた。これは、同じようなことを経験した方でないと共感できないことであろう。
最近日本人スポーツ選手が海外でよく活躍するようになった。チームへのとけ込み方にいろいろあるとは思うが、見えない人種の壁というストレスを表に出さずに、しっかり結果を出している彼らは本当にすごいと感じる。特に私のように、目標に到達するにはどうすればいいのかと自ら考え、日本に居たころから地道に言語学にも時間を割き、イタリアで活躍している中田英寿選手は私が非常に尊敬する選手である。何度も言うが、結果までの過程が大事なのである。だから、結果を出している点では尊敬するが、言語まるっきしダメなのに活躍しているイチロー選手や丸山茂樹選手などを、実は好きにはなれない。
日本でも多くの外国人選手がプレーしているが、お客様選手という感覚でなく、彼らにも「日本語を話せなければ日本にはとけ込めないぞ」と思わせることが出来るのはいつなのだろうか?はたしてジーコが日本語を話すようになるのはいつなのだろうか(笑)?
注)IELTS:International English Language Testing Systemの略で、イギリスやオーストラリア留学の際に、英語能力を評価するのに用いられる。IELTS6.0以上は、なじみのあるTOEFLでいうと560~600点以上と私のときは言われていました。でも、謙遜でも何でもなく私の英語力はそんなにあるとは思えない(笑)。
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